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DIGITABLE 第12回勉強会レポート

2008 年2 月16 日 於:森下文化センター(第三研修室)


Photoshop 研究講座  「レイヤーとマスク」
事例研究  「作品展にむけたプリント作業」
事例研究「解像度と階調の関係についての考察」
RGB セミナー 「プロファイルとカラーマネジメント」


担当:平野正志 講師
担当:山口明夫 会員
担当:田中寿郎 会員
担当:高木大輔 講師



Photoshop 研究編講座
「レイヤーとマスク」     担当:平野正志 講師

★再びレイアーについて
前回の勉強会でレイアーについての理解度が少し足らないかな?と感じられたということで、今回は再びレイアーについての解説が行なわれた。この機能は合成写真を作成する方々には勿論、合成写真は作成しない!という方々にとっても調整レイアーを使用することにより、何度でもやり直し可能な色調補正を行なうことができる。ちなみに私の場合、100%の割合で色調補正は調整レイアーを使用しています。また、調整レイアーにマスクをかけることにより部分的な色調補正が可能となり、より細かな調整が行なえ、自分の思い通りに写真を仕上げることもできる。こんな便利な機能を見逃す手はありませんね!
今回はPhotoshop Elements での調整レイアーを中心に解説がすすめられていたが、Elements といえども十分すぎる機能で、レベル補正は勿論、トーンカーブにカラーバランス、明るさ・コントラスト、・・・と、通常使用する調整機能がもりこまれているので、ぜひ活用することをお勧めします。
今回のテーマは以前の勉強会でとりあげたことですが、理解不足であれば何度でも繰り返し勉強し直すことはとても大切なことだと思っていますので、より快適な写真作りするために、十分理解していきたいものだと感じています。 (井村記)

解説を行う平野正志講師


解調整レイヤーを使ったレベル補正


レイヤーマスクの説明


(事例報告)「作品展にむけたプリント作業」      担当:山口明夫 会員

特別報告として山口会員から、氏の参加する写真塾のグループ展に向けてのプリント作業の報告があった。
山口氏は写真塾以外にも、年間を通して少人数でのNUDE 撮影会を主宰しており、今回の作品もそのテーマに沿ったもの。毎月のように手馴れたスタジオで周知のモデルとの対話を続けているだけあって、作品の完成度もかなりのものである。
さて目下の山口氏の悩みは、大伸ばしのプリントに当たってのシャープネス処理の問題。
氏のフローではRAW 撮影後SILKYPIX で調整、さらにアンシャープをかけて現像〜 Photoshop 上でのゴミ消しなどの修復作業後〜同 プリントプレビューからの出力となるが、SILKYPIX 上で「高精細画像用 強調」+ アンシャープ「量100%、半径0.6 しきい値0」などを選択していたため、シャープネスが効きすぎていたようだ。
まずNUDE やポートレートなどの作品で、後処理が前提の場合には「ナチュラル」でしかも「ノーマルシャープ」よりは「ピュアディテール」を選択すればよいだろう。またPhotoshop 等で後処理が前提の場合には現像時にはアンシャープはかけない方がよいだろう。全ての作業が終わった後、プリントサイズによって適切なアンシャープ(またはスマートシャープ)を施すのがよいだろう。…などのアドバイスが行われた。
                    ●
いずれにせよ、こうした会員間の相互発表が増えてくるのは嬉しい限りだ。時間のやりくりはどうにかなるもので、今後も引き続きこうした発表の続くことを期待したい。     (高木 記)


用紙の説明を行う山口会員。
自称“印画紙のセールスマンのようだ”とのこと






(事例研究)「解像度と階調の関係についての考察」     担当:田中寿郎 会員

デジタブル恒例の会員持ち回りによる事例発表。
今回の発表は田中寿郎氏。デジタルはもとより、アナログの技術、いや森羅万象の“雑学” に至るまで、明解な分析と博識で知られる。筆者(=高木)のつけたあだ名は“歩くカメラ百科事典” で、恐ろしいことにウィキペディアよろしくその情報量は合う度、常に更新されている。まさに当会の“教授” 的な存在である。
写真活動の方はその博識ぶりとは一転して、独自の視点から感性を鋭く表現した“前衛的” な表現で、多くの写真展を開催、注目の気鋭の作家の一人でもあり、この二面性が、また氏の大きな魅力でもある。
さて、今回の発表はその研究者側の視点から「解像度と階調のの関係(についての考察)」。“…考察” とついているところが教授らしい。
発表は氏の「私的コンパクトデジカメ遍歴」で始まった」。身近な話題から難解な?考察のテーマへの伏線をはっているところが“周到な” 狩人を連想させる。
「…遍歴」でこの10 年来の画素数=解像度の進化を理解したあと、本格的考察に入った。
一般のデジタルカメラ愛好者はカメラ側で撮ったままの解像度で作品づくりをしているのがほとんどだが、印刷やホームページ用などの制作業界では、必要充分なサイズに変倍(多くは縮小だが、まれに拡大も)するのが常である。田中氏も作品作りに日常的に使用しているようだ。
一般的なカメラメーカーのアナウンスでは「撮影時にプリントサイズや用途を考えてサイズを選ぼう…」ということだが、たとえ小さく使用する画像でも大きい解像度で写し、画像調整後に解像度縮小(=レゾダウン)した方が階調がよくなる?というのが田中氏の論点である。
原理の考察は田中氏のテキストに詳しいが、例えば800 万画素の元画像を200 万画素に縮小する場合、4画素がその平均値をもって1 つに置き換えられるわけなのだが、レベル補正等によって階調が広がることを考えれば、縮小前に補正してにその4 画素の差が広がっていた方がその後縮小して平均値に置き換わった場合でも有利だということで、テキストではその極端な(補正の)例で解説されている。言葉で書くと分かりにくいが、レタッチの世界では日常の経験則でなんとなくは感じられていることで、「なるほど極端な例ではこれだけ違うのか!」と納得した感がある。分かりにくかった方、欠席した方は手持ちの素材でテキストにならって実際にPhotoshop で実験してみるのがいいだろう。それほど極端な補正でなくとも(=画像の見た目では分からなくとも)、双方の補正後のヒストグラムを比較すれば、補正後縮小の方では櫛抜けがキレイに埋まっているのが分かるだろう。
ここまでの結論では「解像度(画素数)は、階調性の代わりになる。また階調性は、解像度の代わりになる」とのことで、ここまでは会員一同大いに納得の様子であった。

田中氏は続いてカラーの二階調画像の解説に移ったが、「二階調画像」という概念を始めて知った会員も多く少々難しかったかもしれない。筆者自身、モノクロの二階調はデザイン上の手法でよく利用するが、正直カラーの二階調は経験が無かった。
田中氏によれば、「ノイズを加えてから2階調化すると、擬似的に中間調を表現できる」→「2階調画像は、カラープロファイルの影響を(あまり)うけないので、マッチングが多少いい加減でもなんとかなる。」とのことだったので、これらを理解するために、解説に基づき復習をかねて早速二階調画像を作ってみた。
結果、カラー二階調画像の作成法についてはよく理解できた。が、反面いくつか大きな疑問が浮上してきた。まず、二階調画像の中間長の補正作業を行ってみたが、氏の結論通り結果は変化しないことが確かめられたが、作業中のPhotoshop のプレビューは大きく変化するのである。Photoshop のプレビューは二階調画像に対応していないのか?もっとも結果が変化しないのだから、そもそも調整を試みる意味は無いのだが…。
また出来上がった二階調画像のファイル容量だが、先入観で大幅に軽くなるものと思っていたのだが、TIFFファイルで比べると全く変化していない。それどころか右記のようにJPEG 画像にいたっては逆にファイル容量が増している。二階調はJPEG になんぞしてはいけないんだろうが、それにしてもこの辺は筆者の頭の中ではまだ良く整理できていない。
『カラープロファイルの影響をうけないのは何となく理解できたが、ファイルが軽くならないのではあまり利用価値がないのでは?…』なんて、浅学の身にとっては田中教授の残した命題の謎はきわめて大きい。
悔しいが、来月聞いてみることにしようと しょうもないレポートでこの項はご勘弁願いたい。     (高木記)


発表を行う田中寿郎会員






ホワイトボードで図説をおこなう田中会員


(以下高木資料) ※元画像(1200 万画素で34.9MB)


二階調TIFF 画像(1200 万画素で34.9MB)


二階調JPEG 画像(1200 万画素で38.1MB)



RGB セミナー「プロファイルとカラーマネジメント」     担当:高木大輔 講師

RGB セミナーは「プロファイルとカラーマネジメント」の解説。まず理解しておきたいのはキャリブレーションとプロファイルの意味の違い。
キャリブレーションは「校正」の意味で、モニターやプリンタなどの個体差や経年変化を元に戻す(標準状態)ことと言っていいだろう。
しかしキャリブレーションだけでは個々のデバイスのマッチングがとれない。プロファイルは個々のデバイスの持つデバイス色と、絶対的色空間との橋渡し(=変換)を行うファイルのことで、これにより各デバイスの色を実用上問題のない範囲に近似させるわけだ。
これがデバイスプロファイルの役割だが、入力側のプロファイル(ソースプロファイル)も理解しなくてはいけない。が、何もややこしいことはない。今日のデジタルカメラの環境ではsRGB かAdobeRGB の情報がExif 規格でついてくるので、これを破棄しないで運用するということだ。巷で「プロファイルを必ず埋め込む」とか「プロファイルを指定する」と大げさに書かれているが、通常はPhotoshop 等の設定を正しくしていれば何もする必要はない、敢えて「破棄しない」だけだ。問題はデザインなどのプロユースやスキャニングなどの入
力画像でプロファイルが無い画像に出くわした場合であるが、今日の環境ではまず、sRGB で開いてみる→色に違和感がなければそのまま→妙に彩度が低い場合はAdobeRGB を指定 ぐらいでいいだろう。
sRGB とAdobeRGB の色空間(というと難しいが、再現性)の違いが理解できていれば、この方法で迷いはないだろう。
sRGB とAdobeRGB の色空間の一番の違いは、グリーンやシアンの再現域にある。これらを理解するためには、現在sRGB で撮影している方も試しにカメラの設定を変えてAdobeRGB で撮影をしてみよう。通常の人肌や花などの赤、黄系ではあまり差が見られないの
で、なるべくカラフルな同一被写体を撮り比べて見て欲しい。尚、最近のカメラではAdobeRGB ならファイルの拡張子にフラグが立つ(=ファイル名が_で始まる)筈なので、容易に判別がつく。

  ※注:
  sRGB ファイル
    DSC _ 0621.jpg
  AdobeRGB ファイル
    _ DSC _ 0621.jpg


注意しなければならないのは、プロファイル取り違えの問題だ。前述のようにAdobeRGB をsRGB として開けば妙に彩度が下がってしまい、逆にsRGB をAdobeRGB で展開すれば派手になる。後者は「派手になった☆」と喜ぶ輩もあるが、正しい色が出ていないで写真としては邪道だし、プリントも飽和しやすいなど問題がおきる。
これらを理解した上で色空間を変換するには、Photosop では4 つのマッチング方法が用意されている。写真は「知覚的」というのが常識だが、プルーフなどには「相対的」も良く使われているので、この際違いを理解しておこう。
「知覚的」は全体に圧縮するもので全ての色が変化するが、階調(グラデ)のつながりはよく一番無難である。反面若干沈んだ印象を受ける。
「相対的」は内側の色よりも外側の色の圧縮を大きくするので、色は変化しにくい。反面部分的に階調やグラデの問題が起きる。
「絶対的」は内側の色は変化しないので問題ないが外側の部分は切り捨てられる。写真と言うよりはロゴカラーの指定などに向いている。
「彩度」はグラフィックのプレゼン用には使われることがあるが、写真のように階調のある表現には向かないので論外だ。
最後に、プリンタのプロファイル作成ツールなどがあるが高価だし知識も必要なので、プリンターメーカーや用紙メーカーから供給されるプロファイルを正しく使用すればいいだろう。
                  ●
以上、駆け足であるがプロファイルとカラーマネジメントを理解する上での要点を述べたつもりである。単純すぎるかも知れないが、今後もこの奥深い問題に継続して皆さんと勉強を重ねていきたいと願っている。
ご清聴ありがとうございました。        (高木 記)


高木大輔講師


何もしなければ、デバイスにより色が違って見えるの
は当たり前(出典:RGB ワークフローガイド)



それぞれのデバイスに合わせて色を変換することによ
り、出力された色も近似してくる。



同じ画像に対して、違うプロファイルを指定した例。
左がAdobeRGBで、右はsRGB。
画像は同じでも見た目の色は変わってしまう。



xy色度図上で比較したAdobeRGBとsRGBの色域。
色度図上で同じ位置であれば同じ色ということにな
る。RGBの数値は同じでも位置が違う、つまり色が
違ってしまうということが確認できる


sRGB とAdobeRGB の色空間の違い


レンダリングインテントの概念図

あるカラースペースから小さなカラースペース(ピンク)
へと変換する。黄色い部分が(色域外)ということになる


絶対的な色域を維持
内側が圧縮されない
ので、色域外の部分
に問題が出る
相対的
内側の色より
も外側の色の
変化=圧縮が
大きい
知覚的
全体に圧縮され
る。つまりすべて
の色が移動=変
化する。

4 つのマッチング方法


今月の一枚:
カラーマネジメントの問題は常に会員達の関心も高い



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