digitable.info
デジタル写真技術研究会

 お問合せ・入会希望は

勉強会レポートINDEXへ

DIGITABLE 第13回勉強会レポート

2008 年3 月15 日 於:亀戸文化センター(美術室)


Photoshop 研究講座  「スタンプ・修復ツール」
事例研究  「NikonD300 を使って」
RGB セミナー 「デザイン・DTP、印刷・製版の知識」


DIGITABLE 第1 回定例総会(※会員頁に結果報告)


担当:平野  正志 講師
担当:勝間田貞美 会員
担当:高木  大輔 講師





Photoshop 研究編講座
「スタンプ・修復ツール」   担当:平野正志 講師

CCD についたゴミけしの問題はもちろん、電線やシミなどの不用物の消去など、修復ツールの出番は多い。従来からのPhotoshop ユーザーは、伝統的な?
スタンプツールを偏重しがちだが、最近では便利な修復ツールのバリエーションが増えているようだ。
この際これらの機能をおさらいし、デジタルフローの効率化のために“食わず嫌い” を無くそうという、平野講師の試みだ。
★コピースタンプツール
従来からの基本的な修復ツール。ブラシのサイズ、種類、濃度等を選択し、もって来たい画像部分からコピーを繰り返していく方式だ。1 回1 回、コピー状況の確認も出来るので、コピー先をずらしたり、大きさや濃度を変えながらマニュアル操作で修復を進めるという、自己責任型だ。コピーのモードにはいろいろあるが、修復には「通常」や「比較明」の使用がほとんどだろう。これらはレーヤーの重ね具合の知識を思い出して欲しい。尚、『不透明度と流量の違い』、『硬さの意味』等の質問が出たが、不透明度はインクの濃さに値し流量は出具合、すなわち不透明度100%でも流量が低ければ薄くしか出ないわけだが、通常モードで普通に修正する分には違いが分かりにくく、どちらか一方の調節でいいだろう。硬さは%によって周囲のボケ方が変わるので、下部の分かりにくいパレットから選ぶ代わりとなる訳だ。
★修復ブラシツール
修復ブラシもスタンプツール同様にコピー元をペイントするが、スタンプツールの単純なコピーと違い、コピー先のテクスチャーや明るさなどにあわせなじませながらペイントするという訳だ。スタンプツールが“マニュアル車” なら、こちらは“オートマチック” と言うわけで、修復ブラシツールのように、いちいちコピー元を指定する必要がない。(Alt を押さないでよい。)
修復部分をクリックすると自動で周りのピクセルを読み込んで修復してくれるおまかせモードだ。もちろんエッジや複雑な部分など、オートマゆえの限界点でうまく行かなければ修復ブラシに切り替えると良い。
★バッチツール
「複製先」を選び、マウスをクリックしたまま修復したい部分の近くの面を囲み選択範囲とする。そのまま選択した部分を修復したい部分の上に移動すると、修復される。選択部分を別の場所に重ねるなど繰り返
しが可能。いずれも背景になじませるようにテクスチャーを修復するしながら、色は背景に合わせるというすぐれモノだ。
★赤目修復ツール
名前の通り、ストロボ撮影で赤く写った目の部分を自動で修復してくれる。赤めの周りに選択範囲を作り、クリックすると赤い部分だけを修復してくれる。
                     ●
こうした便利な“新顔” 修復ツールは、Elements や下位バージョンのソフトにどんどん導入されつつあり、むしろ入門者にとって当たり前になりつつある。
最近のPhotoshopElements などは写真の読み込み時点で、勝手に赤目写真があるかないかを判断して展開前に修復してくれるという、いささかおせっかいな働き者ぶりに困惑させられる。
車と同じで「修復はマニュアルで」、「オートマは邪道」などと頑固に言ってばかりもいられない。筆者自身も含め、常に億劫がらずに?新しい機能に対応しつつ、常にデジタルフローの刷新を続ける柔軟さが必要なのだろう。
(高木 記)


解説を行う平野正志講師



『不透明度と流量』、『硬さ』のパレット




修復ブラシツールのイメージ




バッチツールのイメージ




赤目修復ツールのイメージ


(事例報告)「NikonD300 を使って 」      担当:勝間田貞美 会員

デジタブル恒例の会員持ち回りによる事例発表。
今回の発表は勝間田貞美氏。ニコン派のベテラン会員で、DIGITABLE 開設時から諸事に亘ってお世話いただいている。デジタルに転じてからは、D70 を愛用されていたが、次第に画素数や夜景などの対応力に不満も感じていたようで、今回万を持してのD300 導入とあいなったとの事。
今回の新機種導入に当たっても画素数の大幅増加やソフトの高度化に対応するべく、先行してVista の新鋭マシンを導入されるど、トータルバランスを重視した計画的導入である。
発表はご自身のデジタル環境の整備の変遷から始まり、現在の完成した「デジタル写真ワークフロー」の紹介へと進んだ。機能と問題点を対応整理し、合理的に構築されたフロー図の説明には各会員から共感の声が上がっていた。長年、技術職として活躍されていた氏ならではの、精緻な計画性の賜物といえよう。
★撮影機能検証
D300 の特長のうち、氏の興味を持たれた5 つの機能について実例を元に詳しく報告された。
1. ライブビュー撮影
手持ち撮影モードと三脚撮影モードが選択できるが、今回は三脚撮影モードでの花の撮影が実例で紹介された。「液晶モニターに表示される画像を拡大表示してピントや被写界深度などを確認できるもので、どの部分もオートフォーカスで撮影できる」。
2. 多重露出撮影
2 〜 10 コマまで重ねて写し込み、1 つの画像として記録できる。RAW データを使用して合成、露出は適正になるようにカメラが計算する(ゲイン設定)となっているが、「実際は確認しながら条件設定する必要がありそうだ」とのこと。
3. 画像合成
撮影したメモリーカードから画像をカメラで2 コマを重ね合わせて1 コマの画像に合成する機能。「RAWデータを使用するので諧調性は優れている。ただしゲイン設定(出力)をうまくできないと露出に不満が残る。」とのことで、D300 の新機能を瞬時に使いこなすにはゲイン設定の習熟が必要なようだ。
4. 手ブレ補正レンズに付いて
今回はVR70 〜 300 ズームレンズ+一脚を使用して桜の写真のテスト比較があり、効果の確認が報告された。手ぶれ補正機能には2 種類あり、今回はNormal モード(流し撮りを含めた通常のもの)で、は激しい揺れに有効とされるActive モードのテストはこれからとのこと。
5. 高感度撮影
高感度ノイズ除去ON(標準)で右写真のような比較テストが公開された。条件はISO200,1600,3200 の三段階でゲイン(感度)アップによるノイズ変化が良く分かった。反面、少々刻みが大きく、「使いごろのISO400,800 あたりの変化がみたい」という贅沢な声も上がった。
★撮影後のフロー
撮影後はNikonTransfer で取り込み→ ViewNX で閲覧・選別→ CaptureNX で現像・調整というNikon 純正準拠のオーソドックスな作業フローである。
勝間田氏はLightRoom なども試されたようだが、同ソフトによる画像管理などに少々違和感を感じ現在はあまり使っていないとのこと。いずれにしても現像・調整はCaptureNX でという方針なので、一貫作業でこそ威力を発揮するLightRoom をわざわざ通過する意味は半減するのであろう。このあたりの状況は筆者も同様である。
さて、ViewNX だが「使用感はなかなか快適」とのことである。ちらりと拝見して見たところでも(右画像)ヒストグラム表示、閲覧やラベル・レーティングメニューも充実し、ひと目で分かりやすそうな感じがうかがえる。旧バージョンのNikonView をいまだに使用している筆者には「早く導入しなければ…」という焦燥感を覚えた。またプリント機能のうち、コンタクトシートは使い勝手がよく特に重宝しているとのこと。現像・調整に関してはCaptureNX を使用、作業空間はAdobeRGB である。基本的なRAW 現像はもちろん、アクティブD ライティングやカラーブースター、コントロールポイントなど、同ソフトの特徴的な機能を充分に使いこなしておられるようで、分かりやすく解説していただいた。
尚、基本的にはCaptureNX 上で作業を終えたら、調整履歴を保持したままNEF で保存という原則のようだが、例外的にフィルター処理、合成、モノクロ処理などはTIFF 保存後PhotoshopCS3 で作業を行う。
Photoshop で作業を終えた完成画像は容量を考えJPEG 保存も使いわけているようで、現実的で歩留まりの良い、理にかなった方法と思われる。
最後にPX-5500 で出力したプリントを見させていただき、上記のフローを再確認。たいへん充実した内容の発表をしめくくっていただいた。   (高木記)



発表を行う勝間田貞美会員


300 背面部機能の説明


勝間田氏のワークフロー


お孫さん協力による力作”多重露光作例”

高感度撮影の比較


ViewNX でのブラウジング


キャプチャーNX でのトーンカーブ調整


カラーコントロールの説明



RGB セミナー「デザイン・DTP、印刷・製版の知識」     担当:高木大輔 講師

一年を通じたRGB セミナーの最終回として「デザイン・DTP、印刷・製版の知識」。アマチュア側から見て耳慣れない用語や、理解するための背景を中心に解説を行った。
★ RGB ワークフロー
商業印刷の世界では印刷機の原理自体がCMYK の4色で行われているため、元々デザインや製版の業界ではCMYK モードで作業を行う原則であった。ポジフィルムからのスキャニングもCMYK に出力していたのである。Photoshop の浸透とともに画像処理の一部でRGB モードも使用したが、広く普及したのはデジタルカメラの一般化とともにであるから、まだ数年ちょっとの話である。しかし同時にWEB やメールなどパソコン上で画像を扱うのが常識になり、色空間の概念も確立し、ワンソースマルチユースの概念からもRGB でのデータ作業が効率的となった。
それゆえ、(依然印刷機自体はCMYK であるが)印刷直前までの作業を色空間のはっきり指定したRGB で行おうという、いわば“旧業界のプロへ向けた” 提唱である。デジカメユーザーには元々当たり前のことだが、氾濫する色空間の情報や知識に惑わされないようにしたい。
★ RGB プロファイルは破棄しない
以前のDTP 作業及び入稿の規定では、プロファイルを破棄するように指示されていることが多かった。(CMYK の画像にプロファイルが埋め込まれていた場合に、RIP《=ポストスクリプトからのラスタライジング》で混乱がおきるため)RGB 画像は、カラーマネージメントのためにプロファイルが必要であり、破棄してはいけないということ。
★ソフトウェアのカラー設定
他のDTP ソフト(Illustrator やInDesign) とPhotoshop の間でカラー設定を共通にしておけばよいということ。CS 以降ならBridge の「Creative Suiteのカラー設定」ですべてのCS アプリケーションのカラー設定を簡単に「同期」させておけばよい。
★ RGB 実画像の留意点
ファイルネームや拡張子、プロファイルに注意しよう。
またRGB 画像は、最終使用目的に合わせたレタッチやシャープネス処理などに留意した上でCMYK へ変換しなければ適正なデータならないのを理解しよう。
★画像処理は16bit 補正
できるだけ劣化を抑えるためには画像処理は16bit で行おう。画像処理を行っても劣化が少なく、滑らかに仕上がる。元画像が8bit であっても画像処理を16bitで行うだけでも十分に効果はある。
 つい最近まで、デザインやレイアウト作業で扱う画像データは、CMYKがほとんどであった。しかし近年、デジタルカメラが撮影の標準になり、3DCGソフトウェアで作成された画像の使用頻度も高くなっているために、RGB画像を扱うことが多くなっている。
 CMYK画像と比べて大きな色空間を持つRGB画像は、レタッチなどの画像処理に有利である。また、ワンソースマルチユースの観点からも、RGBでのデーターベース構築が画像データの有効利用に向いている。こうした背景から、RGBワークフローという考え方が生まれてきた。
■モニタキャリブレーション
 デザイン段階でフォトグラファーからプルーフプリントを受け取ったとしても、画像のチェックや画像に合わせたグラフィックを制作するためには、やはり正確なモニタ表示が必要である。これからのワークフローには、モニタのキャリブレーションが必須になってくる。また作業場所での照明にも配慮したい。
■RGBプロファイルは破棄しない
 DTP作業及び入稿の規定では、プロファイルを破棄するように指示されていることが多い。これは、CMYKの画像にプロファイルが埋め込まれていた場合に、RIPで予期しない変換がかかってしまうという事故があったためである。それに対してRGB画像は、カラーマネージメントが成立した状態でなければ正常な運用ができない。
RGB画像のプロファイル添付は必須であり、決して破棄してはいけない。
 プロファイルが埋め込まれていないRGB画像は、プロフォトグラファーの撮影によるものではないと考えて差し支えない。コンシューマーデジタルカメラのほとんどが、撮影画像はsRGBとして生成するが、プロファイルを埋め込まないからだ。プロファイルがないRGB画像をPhotoshopで開く際には、プロファイルを指定しなければならない(指定の方法は、「画像の開き方」を参照)。
■ソフトウェアのカラー設定
 現在多くの印刷入稿規定で、Photoshopのカラー設定は右上図のように推奨されている。一切のカラーマネジメントを行わない設定だ。しかしこれでは、RGB画像をあつかう上でトラブルが生じることがある。最低でもRGBのカラーマネジメントポリシーは「埋め込まれたプロファイルの保持」に設定し、全てのチェックボックスにチェックを入れておくべきだ(右中図)。
 本来はP.16-P.17の「Photoshopのカラー設定」通りの設定が望ましいが、CMYKに関する部分は、入稿先の製版所や印刷所の推奨も参考にする必要がある。 IllustratorやInDesignとPhotoshopの間でカラー設定を共通にしておけば無用なトラブルを避けられる。作業を複数のメンバーで行う場合も、CS2ならばBridgeの「Creative Suiteのカラー設定」ですべてのCSアプリケーションのカラー設定を簡単に「同期」させられる。カラー設定をCFSファイルとして保存し共有すれば、容易にカラー設定環境を揃えられる。。        (高木 記)


高木大輔講師


多くの入稿規定で推奨されているPhotoshop の
カラー設定。「カラーマネジメントポリシー」が、
「オフ」に設定されている。RGB 画像のプロファ
イルまで破棄されてしまい、正確なカラー再現
ができない
(出典:RGB ワークフローガイド)
※以下同じ


最低限RGBのプロファイルを生かしたPhotoshopのカラー設定、出力された色も近似してくる。


16bitと8bitの差の概念図


網点の重なり
GCRの理論で考えれば、反対色で濁す代わりに墨を使用しても同じ色再現、つまり同じLab値にすることが可能である。しかしドットゲインが10%のときは同じでも、15%にアップするとCとBkの透過性の差でLab値は異なってくる。またBkが30%を超えると色成分を覆い隠すので彩度も落ちる。




あるカラースペースから小さなカラースペース(ピンク)
へと変換する。黄色い部分が(色域外)ということになる


U.S.Web Coated(SWOP)v2 /アメリカの輪転機
用のプロファイル。CMY がBk に置き換えられてい
るのが確認できる


今月の一枚:
「久しぶりの発表に心地よく緊張した…」と勝間田会員



勉強会レポートINDEXへ 
不許複製(C) Digitable.info. 20080322 All Rights Reserved.    TK-PRESS   Pro-photo   Satsueikan